2015年12月25日金曜日

大学と民間等との共同研究制度の沿革(5)

 20151225日の記事「大学と民間等との共同研究制度の沿革(4)」の続きです。

画像は、共同研究契約書の記事の執筆に関連してまとめた1946(昭和21)年から2011(平成23)年までの我が国のトピックと文部省の政策の一環で措置された国立大学の地域共同研究センター及び研究協力担当課の設置の状況をまとめた表です。

 この表では、国の政策では、共同研究センターの設置が先行し、事務局組織(文部省の地方支分部局)としての研究協力担当課の設置の順となっていることを示しています。共同研究センターに配置されているのは、専任教員と兼任教員であり、研究協力担当課については、常勤の文部事務官です。行政管理の側面からは、教員のほうが配置しやすい半面、事務官については、「定員」という枠の制限があり、新たな組織の増設は制限されていました(行政官の人数が増えるため)。

 また、高度経済成長期が終わり、大学と民間等との共同研究制度が創設され、バブル期の始まり直後に国立大学への地域共同研究センター整備が開始されます。バブル期が終息していくにつれて我が国の経済は下降へと転じ、科学技術基本法制定への機運が高まります。そして、地域共同研究センターの整備が進むにつれて、研究協力担当課の設置も進んでいくことになり、今日に至ります。

 いざなみ景気期は、好況感のうすい、ゆるやかな経済成長にとどまり、2008(平成20)年には景気が失速し始めており、政府はいくつかの打開策を打ち出しますが、そのうち産学官連携関係の施策としては、2010(平成22)年の補正予算措置「地域産学官共同研究拠点整備事業」があります。この事業はゴールデンウィークを挟んでその一部が公表されたものの、具体案が判明したのは、夏を迎えるころでした。その内容は、地域の産学官共同研究に資する共同研究拠点を整備するために、建屋整備と研究支援員等雇用のための経費を支援するというもので、基本的に雇用拡大を下支えしようと企図したものでした。しかし公募実施直前に、これを企画した政権が下野したことにより、補正予算は大幅に減額され、景気浮揚につなげるまでには至りませんでした。

 このように、産学官連携諸施策は我が国の経済情勢と密接に関わりながら展開しています。産学官連携に係る実務も、大学と民間等との共同研究制度が発足した1983(昭和58)年と比べると、格段に業務量が増え、また、高度な専門性をもたなければ職務を全うすることが困難になってきました。この業務に携わる者の雇用形態やキャリアパスなど、解決しなければならない課題も増えてきているように感じています。

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