2015年12月25日金曜日

大学と民間等との共同研究制度の沿革(4)

 20151225日の記事「大学と民間等との共同研究制度の沿革(3)」の続きです。

 さて、20151224日の記事「大学と民間等との共同研究制度の沿革(1)」に掲載した共同研究契約書様式参考例の抜粋に戻りましょう。
 向かって左側が初期の共同研究契約書様式参考例で、改訂版と比較するととてもシンプルです。2001年から2004年ごろまで、わたくしはこの様式を実務で参考にしていたと記憶しています。向かって右側が改訂版で、2002年ごろから2004年にかけて(国立大学の法人化前に)改訂されたものと思われます。なぜ2002年かと申しますと、200110月に刊行された『大学と産業界との研究協力事務必携』第四次改訂版には、この改訂版の様式参考例は掲載されていないからです。

 2001年に至るまでに我が国では何が起こっていたか。1998(平成10)年に研究交流促進法、大学等技術移転促進法(TLO(技術移転機関)の整備促進)が、1999(平成11)年に産業活力再生特別措置法(日本版バイ・ドール条項)が、2000(平成12)年に産業技術力強化法が制定されていました。1999(平成11)年の産業活力再生特別措置法第30条がバイ・ドール条項であり、国の委託研究において国に譲渡することとされている知的財産権の内容を踏まえ、受託者に帰属させ得る知的財産権を所掌する法律、すなわち特許法、実用新案法、意匠法、著作権法、半導体集積回路の回路配置に関する法律、及び種苗法が具体的に明記されています。

新たに法制度を整備する場合、関係する各省庁では協議の場を何度も設けて議論を繰り返します。これを各省協議といったりします。共同研究において、(1)大学と企業の間、(2)大学と大学の間、(3)企業と企業の間、を問わず、知的財産権がとても重要なことと認識されてきたことになります。したがって、共同研究契約書様式参考例においても、これらのことがら(定義を含めて。)が盛り込まれたものと考えられます。

 このようにして共同研究にまつわる当時の社会情勢や立法の過程を振り返ってみると、改訂版共同研究契約書参考様式の内容の理解も以前におそらく感じた難解さや困難さが緩和され、より抵抗少なく、実際の共同研究契約書作成にも活かすことができることでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿